戦場の狼

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馬次郎の表情はにこやかだ。 しかし、それがかりそめである事は辺りに満ちた殺気によって明白である。 彼は、片手を敵の前につきだした。 敵に自らの武器を見せ付ける事で精神的優位に立とうと言うのである。 もう何時間たったのだろう?しかし、時間は二人が睨み合い出してから、まだ一分もたっていない…なんという緊張感か。 先に動いた方が殺られる。二人は、今までの経験からそれを感じとっていた。 「このままじゃはじまらん、同じにいくぞ…」鹿太郎が低い声で言う。 「望む所だ。貴様との因縁もこれで終わりよ。」馬次郎が威圧感溢れる声で言う。 二人の額に汗が浮かんだ。………二人の汗が一滴同じに床へ落ちた。 それが合図となったのだった! 「じゃん!けん!ぽん!」グーとパー ゆっくりと一人が崩れ落ちる。 どちらが勝ったのかなんて大した問題では無い。 ただ、勝利した人間が給食の余りのプリンを獲得した。 それだけを知っていれば、それでいい。 夢半ばに散っていった者達の事など…同情しない事が戦士達への唯一の供養になるのだから。
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