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想いは空へ
「羽を分けてもらえませんか?」
一人の少女がドードー鳥に話しかけた。
『あぁいいよ、尾羽なら一枚あげよう』
「ありがとう」
少女はドードー鳥の尾羽を一枚抜き取り、大事に腰の袋に収めた。袋の中身はすでにいろんな羽がたくさん入っている。少女はドードー鳥に別れを告げると、また羽を求めて旅を続ける…
この世界の人は全て翼を持って産まれて来る。だがしかし、その中で一人の少女だけは翼を持っていなかった。産まれた時から少女は翼を持っていなかったために、少女は薄氷のように透き通る大空を見上げては毎日溜息をついていた。
(あの空を一度でいいから飛んでみたいな…)
空を見ては眺めている少女を見て回りの人々は少女を哀れむ者、翼がない事をからかいいじめる者と、少女の周りには二種類しかいなかった。唯一の例外と言えば、少女が幼い頃から親しい魔法使いだけが少女と普通に付き合ってくれる人物であった。
その魔法使いも世間からは変わり者呼ばわりされているのだが、本人は一向に気にしていない。町外れに小さな庵を建てて日々を過ごしていた。
外れ者同士気が合うのか、少女もこまめに魔法使いの庵を訪れては日が暮れるまで魔法使いの庵で魔法使いの仕事を眺めていた。
しかし、少女は一つの思いを胸に秘めていた。羽が無い事を理由に哀れまれたり、いじめられたりする生活に少女は疲れ果てていた。夕陽が沈み、淡い濃紺のヴェールが空を包む頃、魔法使いの庵から自分の家に帰る間や、一人で風の流れる音を楽しみながら広い草原の真ん中で寝転んで空を見上げている時にいつも考えていたことがある。
(翼が欲しい)
と。翼さえあればいじめられる事も、哀れまれる事も無いだろう、そして自分を人として扱ってくれないまわりの人々の考えを改めてもらうために…。
そしてある日、少女は決意を胸に秘め、魔法使いの庵を訪れた。
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