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少女は北に向かって一週間ほど歩いた所で、緑深き森の中の小さな湖のほとりに辿り着いた所で、休憩している白鳥の群れと出会った。
(この白鳥さん達で集まっちゃうかな?)
少女は白鳥達に近寄って行く。
「こんにちは、白鳥さん。良いお天気ね」
少女は白鳥に声をかけた。
『やぁこんにちは、お嬢さん。お散歩かい?』
白鳥も陽気に返事を返す。
「ううん、散歩じゃないの、旅の途中なんだ」
『へぇ、まだ小さいのに頑張るね、一体なんの旅なんだい?』
白鳥はきさくな性格なのか、気軽に返事を返し、質問をしてくる。
「あのね、鳥の羽を集めてるの。私、翼を持って無いから翼を作ってもらうために羽を集めて旅をしてるの」
少女はすこしうつむき加減になりそうだったが、白鳥の瞳から目を話す事無くそう喋った。
『そういえば、君は他の人達と違って翼が無いね、でも翼なんて一つの手段でしか無いし、無いならないでいろんな楽しみ方があると思うよ』
「私ね、一度でいいからあの大空を自分でとんでみたいの。いつもいつも、下からそらを見上げたり、飛んで行く鳥さんたちを見る度にそう思うの。ずっとずっと憧れているの、あの大空に…」
少女はうすもやのような雲の流れる空を見上げながら自分の夢を語る少女。
『そっかぁ、そうだね空に憧れるか。翼の無い君があの空を飛んでみたいと思うのは当然かもしれないね。あの空は誰にもでも優しい。時には厳しいこともあるけれど、空を飛んでいる間は母親に包み込まれているような気になるほどに気持ちいい。そうだ、なにか俺達にも協力できる事はないかい? そういえば羽を集めてるって言ってたよね』
「うん、そうなの。もし良ければ、尾羽を一枚私にくれませんか?」
少女は上目使いで遠慮がちに白鳥を見つめる。
『俺達の羽で良かったら是非とも使ってくれ、気にする事はないよ、困っている時はお互いさま、助け合わないとね』
そう言って白鳥達はエヘンと、胸をそらしたかのように見える。
「ありがとう!」
少女はそういうと小さく飛び上がった。
『おおっと、最後に一つ条件がある。羽を取ったあとは俺達と遊ぶこと。それでいいかい?』
少女は白鳥の出した条件に少し驚いたが、すぐに満面の笑顔を浮かべて、
「ええ、よろこんで!」
少女は湖に飛び込んで白鳥に抱き付いた。
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