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白鳥達と別れを告げて少女は魔法使いのもとへ向かって歩き出した。白鳥達は全部で三十四羽。これで羽の数は一万と二枚になったはずである。少し心配になった少女は町の近くの小高い丘の上で羽の枚数を数え始めた。
一枚、二枚ゆっくりとだが時間をかけて確実に一枚一枚数えていく。悪戯に流れてゆく時間を気にする事なく、少女はその時間を楽しむようにゆっくりと数え一緒に遊んだ鳥達のことを思う。
残りの枚数も少なくなり、数えた枚数が九千枚を越えたころにはすでに日は傾き、空には太陽が沈むのに合わせて月が顔を見せる。星達が優しい光を地上に向けて投げかけるそんなおり、一陣の風がザァっと丘を吹きぬけた。
夕闇の空に舞散る色とりどりの羽、そしてその多くは風にのって遥か遠くに吹き散らされてゆき夕闇に消えて行った。
少女は自分の艶やかな黒髪が風と踊るのを押さえてその光景を見守っていた。
(飛んじゃった…そうよね、こんなところで数える私が悪いんだもの。また集めなおしなのかなぁ…)
楽しそうに風と戯れながら舞散る羽を見つづける少女は気がつかないうちに涙を流していた。舞散るは羽と一緒に、鳥達との思いでも飛んで行くような気がして…
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