迫るその日、騎士が思うは

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どこまでも広がる青の大空、その中心で輝きを放つ真っ赤な太陽。 勝手気ままに舞う微風は木の葉を踊らせ、澄んだ音楽を奏でる。 「美しい……」 その美しい自然に見向きもしない男が一人、屈強な体を銀色の鎧で纏い、子供達と戯れる女を熱心に見つめていた。 金色の長髪はしなやかに揺れ、桃色の唇は常に笑みの形を保っている。幼さと上品さを合わせ持つ顔立ち。 女が身に付ける数々の装飾品は、太陽の光で煌びやかさを増す。桃色を基調としたドレスは、至る所が土で汚れていた。 「流石に、遊び疲れてきたね。そうだ! 料理を作ってきたから、食べてみて!」 元気な声を発するドレス姿の女は、真っ白な布を草原に広げると、いくかの箱を置いていく。 嬉しそうに蓋を開けた子供達だが、その下にあったのは異様な食べ物だった。 黒みを帯びた肉に、形と大きさがばらばらの野菜。パンに挟まれたバターはどっぷりとはみ出ており、得体のしれない物体もある。 お世辞にも、綺麗な料理とは言えない。 手料理を手渡された子供達は、互いに顔を見合わせ苦笑いする。 お腹が減っているにもかかわらず、食欲が湧いてこない。 しかし、ドレス姿の女が放つ期待に満ちた目が、子供達の手を動かす。こんな顔をされれば、食べないわけにはいかなかった。 「どう?」 「う、うん。とっても美味しいよエメリア様」
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