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「記憶がないって言うあの娘だ。あの、働きモンの…」
「えっ?夕菜ちゃん?」
唖然とした近藤。
松平を用心深く見つめた。
「そうそう、その安達夕菜っていう娘の事だ」
「夕菜ちゃんが一体?」
”バンッッッ”
「とっつぁーん‼」
「おめーは馬鹿か?ゴリラ。
安達がな、瑠璃丸の代わりと言えるカブトを将軍に連れてきたんだよー」
松平は気だるそうに言った。
近藤の表情は急変する。
「瑠璃丸の代わりといえるカブトを連れてきた…?
夕菜ちゃんが?」
「おめーの腹が危ないってのを聞いたらしく、七色に輝くカブトを持ってきたんだよ…」
近藤の表情に兆しが現れた。
「七色に輝くカブト⁉
夕菜ちゃんそんなものを…」
「それで将軍の気分は優れたワケだ。
それで安達がなぁ、将軍に気に入られたんだよ」
「気に入られた…?」
「そーなんだ。
安達を気に入ったらしくてなぁ…。安達の願いを叶えたいって言ってるらしーんだよ…」
近藤は目を見開いた。
松平は拳銃を懐に戻して言った。
「夕菜ちゃんの願い?」
「相手は将軍だ。
何でも叶えてくれるらしい。
安達の願いをおめーは聞いて来い。それがおめーの罰だよ。
近藤…」
近藤は潤んだ目を松平に向けた。
「夕菜ちゃん…。
そんなに俺の事…」
「じゃ、オジさんは忙しいんでね…」
松平は近藤に背を向けて歩き出した。
近藤は歓声を漏らす。
「夕菜ちゃーん…‼
給料を増やしてあげるよー‼」
”バンッッッ”
「いやぁぁぁぁぁぁん‼」
「近藤。給料を上げる上げないはおめーが決めるんじゃねぇーことだぞ?」
「とっつぁん‼そういうのは、発砲して言わないで‼」
「あぁ?コレがオジさんの礼儀だから…」
「どんな礼儀‼」
「じゃ、頼んだぞ?」
近藤は夕菜に感謝の気持ちのこもった言葉を声に出す。
「夕菜ちゃーん‼
俺は嬉しいぞー‼」
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