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俯いていたアローンが口を開いた。
「……そうですか。この烙印には、そんな意味があったんですか…」
今にも消えそうな小さな声でアローンはそう言った。
…もしかしたら、泣いているのかもしれない。
そう思い、私はアローンの頭に手を伸ばすが、アローンはちょうどその時顔を上げた。
見えた表情は泣き顔ではなく、寂しさを含んだ無表情だった。
「教えていただき、ありがとうございます、神父様」
「…お礼を言われるような事は言っていませんよ。むしろ、傷つけるような事しか、言っていません」
私が少し顔を伏せると、アローンは大人びた微笑みを浮かべた。
「僕に真実を隠さずに言ってくれました。嘘をつかれるより、ずっといいです」
ああ、この子は本当に聡明だ。
自分の立場を受け入れることがどれだけ辛いか…。
他の子でも、すぐには受け入れられないというのに、この子は……。
私は思わず言ってしまった。
「──無理をしなくてもいいのですよ」
するとアローンはきょとんと私の顔を見つめた。
「私が言うのも何なのですが、こんな話をされて辛いでしょう、悲しいでしょう。烙印を押されて、母と離れ離れになって、辛くないはずがないでしょう。
前に母子を見ていた時も、羨ましかったのでしょう?
無理をしなくていいのです。辛い時は、泣いていいのです。貴方はまだ、子供なのですから──」
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