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「……ぃ……オイッ!」
「ハッ━━」
「大丈夫。じゃねーよな、顔色悪いぜ」
物思いに耽っていたら、そのまま寝てしまったらしい。気がついた時には、マッコイに肩を揺さぶられていた。
「すまない」
汗を拭いながら、微かに言葉を紡ぐ。
「気にすんなよ。長いつきあいだしな」
そう笑いながら、頼もしく、彼は自分自身の胸を叩いた。
(《長いつきあい》……か……)
アレスとマッコイは、優秀な《兵士》と成るために、八歳の時には既にS.Fに所属していた。
マッコイは辛うじて覚えているものの、アレスにはS.Fに入るまでの記憶が一切無い。自我を持ち始めた頃には、既にS.Fに所属していた。
幼い頃より、異常なまでの訓練を重ねた。
人を殺すためだけに。
その事実は、アレス本人にとって。自分が本当に《人》なのかを疑うまでに、さほど時間はかからなかった。
「……時間だ」
S.F全員に支給される、耐久性の極めて高い。白銀のアンダースーツの上から、幾何学的な紋章の描かれた紅の服を身にまとう。
「おうよ!」
先程までの暗い雰囲気を吹き飛ばすくらい、元気のいい返事をするマッコイ。
マッコイはアンダースーツの上からTシャツを羽織っていた。彼にとっても愛着のあるデザインらしく、任務の度に毎回チョイスしている。
何時までもここに居るわけにもいかず。徐に、歩き始めた。
……心なしか、足取りは重く。
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