激戦の標

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(ふざけやがって……) 余裕をかましている敵ほど、頭にくる奴はいない。 しかし。いや…………だからこそ油断は出来ない。奥歯を噛み締めながら、今か今かと待ちかまえていると、男は深く溜め息をついた。 「別にふざけてなんかないさ」 (なっ!) 「驚いたか?無理はないがな」 次々と考えが読み上げられ、こめかみに冷や汗が垂れる。 「先に伝えておこう。オレの能力は《思考露呈(リーディング)》。《心を読み取る》力だ」 (俺の動揺を誘っているのか?……だとしたら、あまりに幼稚すぎるではないか……ならば!) 「嘘じゃね━━」 ジェイレスが全てを言い終わる前に、ためらいなく引き金を引いた。乾いた音と共に、高速で弾が撃ち出されたが、やはり総隊長とだけあり。体を右にさばいて、難無く避けて見せた。 (不意打ちもダメか……) 悉く。いとも簡単に読まれてしまう。これは《本物》だと、認めざるを得ない。 「いきなり銃ぶっ放すなんて……卑怯じゃないの?」 「戦争に《卑怯》なんてあるのかよ。ソイツは知らなかったね」 「ちげぇねぇ」 クククッ、と。短く笑われる。 自分の口では余裕を醸し出していたが、心はそうはいかない。苦闘する自分の姿が脳裏に浮かび上がって、思わず舌打ちをしてしまった。 (長い戦いになりそうだ)
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