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静けさを纏い、風の音のみが聴覚を刺激する中、その静寂を《二つ》の産声が破る。
この世に《生》を受けた新たな生命は、己の存在を誇張するように、強く。ただ強く泣き続けた。
「とうとう……産まれたな」
燃えるような、真紅の髪を持つ男が、柔らかな笑顔を見せた。
「えぇ、そうね」
それに対し、漆黒の長髪を持つ女が、二人の赤子を両手に抱き、優しく微笑んでいる。
「………………ふぅ」
男の口から、不意に溜め息が漏れ出す。
「なぁに?暗い顔しちゃって、あなたらしくもない」
いたずらっぽく笑いながら、女は男に問いかけた。
「いや、この時代に生まれたからな。強く、逞しくなければ生きられない」
自分の子供の行く末を案じ、男は少なからず不安になってしまったのだ。
「それなら大丈夫よ、心配ない。…………だって《あなた》の子ですもの」
「そう、だな。《きみ》の子でもある」
「ふふっ、きっとそうね」
そう言うと、女は視線を右から左、左から右へと移し、明るく男に提案をした。
「この子たちの名前、何にしましょうか?」
女の両腕には、《黒い髪》と《赤い髪》の子供が、瞳を閉じていた。
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