0~ideal~

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男は笑いながら語り掛けてくる。そんなお願い、断る理由なんかない。連れて行ってくれるなら大歓迎だ。 「悪い。今日は先約がいるんだよ」 でも、今日はダメだ。断る理由がちゃんとあるんだ。 「くそ、先を越されていたのか!あ、じゃ俺も連れてってくれよ」 男はそう言って笑う愉快な男だ。こいつと遊ぶのは楽しいだろう。 「悪い。今日の先約は仲間内じゃなくて、女性だからさ」 手早く荷物を鞄にしまう。 男はポカン、と何が起こったか分からないような顔をしている。 「女性と…って…お前まさか…!」 「じゃーな。今日のことは明日にでも事細かに説明してやんよ」 勝利の笑みを浮かべながら、自分は男に手を振り教室を出た。 背中にぶつかるように、男が騒いでいる声が聞こえた気がした。 …ぼんやりし過ぎたか。 早歩きとも駆け足とも違う、微妙な速度で外を目指す。               ‐
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