1715人が本棚に入れています
本棚に追加
校門が見えてきた。
段々と大きくなってくる。
良かった。まだ来ていなかったようだ。
後数歩で校門を抜ける。
───そこに。
「遅いよ!すぐに出てくる、って言ってたじゃん!」
死角から飛んできた女の声。
驚きを隠さず声の方に目を向ける。
そこには、拗ねている自分の彼女がいた。
顔は良く見えない。
名前も知らない。
「遅刻だよ!これはもう大犯罪だよ!」
…2分の遅刻は罪だったようだ。
「愉快な仲間達を追っ払うのに必死だったんだ。2分の遅刻で済んだなら大殊勲だろ」
「あー!開きなおってる!私怒ってるんだからね!」
顔は良く見えないが、こんなかわいい怒り方なら歓迎会を開きたいくらいだ。
「悪い悪い。お詫びに何かおごるから許してくれよ」
女はむっ、と自分を上目遣いで睨む。
「それで許すと思ってるの!?」
「思ってるよ。顔にそう書いてあるから」
「え!?」
女は顔を手で隠す。
途端、はっとしたかと思うと、怒りの演技は続行不能と悟ったのか、あはは、と笑い出した。
「当たり。高っかいものおごらせてやるんだから!」
何をおごらされるんだ…。
‐
最初のコメントを投稿しよう!