昼の微睡み、灰緑の涙

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姫雪はすすり上げながらポツリと呟く。 「姫、大切な何かを失った夢を見たの。」 深く深呼吸をして、『ありがと』と黒猫を撫でながら緩く笑う。 「姫、昔は誰かと二人で居た気がするの。 ずっとずっと長い時間を一緒に居たの。 妃梗ちゃんでも、いのりちゃんたちでも無い誰か。 でも姫はその人が大好きだった気がするの。」 姫雪はそっと眼を伏せる。 また潤み始めた瞳からゆっくり雫が流れ出た。 「ごめんね、猫さん。 猫さんはコドモが泣くの嫌いだったよね。」 黒猫に迷惑を掛けたくない、幼くも懸命な姿に黒猫は 愛しさを感じて、またその頬を舐める。  
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