プロローグ

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世間一般の中流家庭に僕は産まれた。 特に貧しいわけじゃないけど、財産などもない。そんな平々凡々とした家… 僕が育ったのはそんな場所。 口数が少なく、ただ温厚さだけが取り柄の生真面目な父親と、情熱的でたくましいがゆえに、口うるさい母親、そして、どんなに追いやっても尻尾を振って寄ってくる子犬みたいに、疑うことを知らない妹。 それが僕を育ててくれた家族だ。 ごく普通の家族… 多分、恵まれた環境。 さらに言うなら、両祖父母にとって、初めて産まれた男の子の孫である僕は溺愛され、叔父(伯父)や叔母(伯母)にも可愛がられた。 もちろん、従兄弟や他の親類たちも優しくしてくれた。 多分、恵まれた環境。 不満など生まれるはずのない中で僕は生きていたはずだった。
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