幻想入り

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「・・・・親父、放せよ」 「何を言ってる!放すものか!」 「意味不明な事態に親父まで巻き込んじまう。だから・・・・放してくれ」 「ならん!お前の母さんと約束したんだ!何があってもお前を守ると!」 そう言う父親の目は真剣な眼差(まなざ)しだった。 だからこそ 「親父、俺は大丈夫だ。何があっても必ず帰ってくる!」 「死んだらどうする!」 「そんときはそんときってことで!」 ッバ 龍也は自ら手を放した。 そして 「ちょっと行ってくる!」 「馬鹿者!・・・・くそ!必ず帰ってこい!」 龍也はサムズアップしながら御社の中へと入っていく。黒い何かに呑まれるようにして龍也の姿は無くなった。 その直後に ギィィィイ、バタン ひとりでに社(やしろ)の扉は閉まった。 「馬鹿者が・・・・必ず帰ってくるんだぞ・・・・」 しばらく真太郎はその扉を眺めながら、涙を流していた。 ただ無機質な扉から目をそらさずに、息子の無事を祈りながら。 それが、少年の物語の始まりであった。
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