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現在、深夜
暗闇に包まれた街は人を家に閉じ込めるのと同時に安息を与えてくれる。
皆、寝息を立て明日への活力を溜めるべく眠りにつく。
こんな時に寝ないなんてよっぽど切羽つまった人なんだろう。
…ではつまりこの男もそうなんだろう。
男は寝るどころか深夜の街を全力で走っていた。息を切らしながら、何かから逃げるように必死に走る男。
年齢は30代前後であろうか。手には血に塗れたナイフを握っており、目は血走っていて明らかに普通ではない。
そんな男をビルの上から眺める一つの人影。
月明かりはその姿を微かに照らしだす。
黒のレザースーツで身を固め、赤いレンズのゴーグルをかけた人影。
男も異常だがこの人影もまた異常な雰囲気をかもしだしていた。
やがて男が人影のいるビルを通りかかる。それを確認した人影は
何を思ったのか、ビルの上から飛び下りた。
男めがけて真っ逆さまに。
だが人影は軽やかに宙を舞い、二回転した後そのまま男の背にのしかかり地面に伏せさせる。
一瞬、何があったのか分からない男。
だがすぐに事態を飲み込み背中に張り付く人物から逃れようとする。
だが人影は蜘蛛のように絡み付き離れようしない。
それに耐えかねた男は背中めがけてナイフを振り回す。
人影はそれを背中から飛び退く事で回避する。
対峙する二人。叫ぶ男。
「テメェ何なんだ!?俺をどうしょうってんだ!?」
だが人影は答えない。
その刹那!!
人影は男に蹴りを入れる。
それは明らかに人間が出せる速度ではない。
男自身、蹴られた事さえ解らなかったろう。
男は抵抗するも声を上げる事も出来ず倒れる。…よく見ると泡を吹いている。
男が沈黙し辺りに静寂が訪れる。
人影は何も喋らない。
だが……
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