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それから、復活した店長と梨子とでぼくの髪をどうするか、二人で勝手にあれこれ討論した後、いよいよぼくのカットが始まった。
ホスト店長は、さっきまで泣きくずれていた顔とはまるで別人のようなプロの顔になって作業に没頭している。
梨子はというと、ぼくの二つ隣の席で女性店員と楽しそうにおしゃべりをしながら、髪を切ってもらっているようだ。
ぼくの方は、ホスト店長がカリスマ美容師モードに切り替えたらしく、あまりの真剣な空気に喋ることができない。
まあ、ベラベラしゃべりながら切られるよりはいいんだけど…。
そんなことを考えているうちに、ぼくのカットは終わった。
ぼくの髪を切り終えたホスト店長は、何かをやり遂げた芸術家のように爽やかな顔になっていた。
「どうかな、ナツキちゃんの要望どうり、短めにすいてみたんだけど…。」
鏡越しにホスト店員は、ぼくにたずねた。
言葉は謙虚だが、それとは逆に、目は『どうだ!!』と言わんばかりの輝きに満ち溢れていた。
よほど自信があるみたいだ。
ぼくは、鏡に映った自分の頭を見た。
ん~、確かに頭は軽くなったけど…、髪型事態は、わずかに短くはなっているものの、カットしていないときと、そんなに変わってないような気がする。
まあ、オシャレに鈍感なぼくに、巧みの技など解るはずもないんだけど…。
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