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ぼくと梨子は、すでに日も傾きかけたオレンジ色の空の下、共に、帰路についていた。
「どう?初めての美容院の感想は?想像してたよりも、だいぶ雰囲気が違ってたでしょ。」
梨子は、ぼくの方を向くとニコッと笑った。
ん~、確かに梨子さんの言うとおり、店には男性客も多く、すでに美容院は女性だけが行く所ではなくなっているようだった。
「でしょ。たまには、ああいう所に行って、オシャレしてもらいなさいよ。あんたは、そういう事に対して無頓着すぎるんだから。」
オシャレか…。
でも、やっぱり男であるぼくには無縁なことかな。
そんなことを考えながら、なんとなく梨子の顔を見ていた。
そう言えば、梨子も髪を切ってもらってたんだよな…。
相変わらずのポニーテイルだけど、何処となく、爽やかな髪になっているような感じがした。
「何よ、人の顔じろじろ見て。」
梨子がぼくの視線に気づき怪訝そうにぼくの顔を見た。
「梨子。」
「なによ。」
「その髪型、似合ってるよ。」
「……!!」
梨子は、ぼくの思いがけない言葉に、かなり動揺した顔を見せたが、すぐに我に返り、前に向き直った。
「……あ、ありがとう。」
そう言った梨子の頬は、夕焼けに照らされて赤く染まっていた。
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