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七夕…。
それは、日本人なら誰もが知っている五節句の一つである。
年に一度、織り姫と彦星が逢えるその日、人々は、願い事を書いた短冊を笹に吊し祝う、奈良時代からの伝統行事である。
ぼくらの町、小座町(オザマチ)もその例外ではなく、7月7日のその日、町中を上げて盛大に、七夕を祝うのである。
「で、何でぼくが、女性物の浴衣を着ているんだ…。」
ぼくは、自分の置かれている現状を認識できないままでいた。
「まあまあ…、大変お似合いだと思いますよ…。ねぇ…一瀬さん…。」
「……。」
湊さんは、ぼくをなだめようとしているようだが、その声は今の現状を楽しんでいるようにしか聞こえない。
「湊さん…、どう考えてもこの柄は男のぼくにはきついでしょう…。」
ぼくは、振り袖の柄を再確認しながら抗議した。
「そんな事ないよ~。なっちゃん、とっても似合ってるよ~。ねぇ~りっちゃん♪」
「確かに…、尋常じゃないくらいに合ってるわね。まあ、どちらにしても、浴衣を着ないと七夕祭りには参加できないんだから、諦めなさい。」
ぼくの必死の抗議もむなしく、ぼくは、公衆の場で女性物の浴衣を着て行く事が確定してしまった。
なぜこんなことにななってしまったのか…。
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