星に願いを…

2/12
175人が本棚に入れています
本棚に追加
/127ページ
七夕…。 それは、日本人なら誰もが知っている五節句の一つである。 年に一度、織り姫と彦星が逢えるその日、人々は、願い事を書いた短冊を笹に吊し祝う、奈良時代からの伝統行事である。 ぼくらの町、小座町(オザマチ)もその例外ではなく、7月7日のその日、町中を上げて盛大に、七夕を祝うのである。 「で、何でぼくが、女性物の浴衣を着ているんだ…。」 ぼくは、自分の置かれている現状を認識できないままでいた。 「まあまあ…、大変お似合いだと思いますよ…。ねぇ…一瀬さん…。」 「……。」 湊さんは、ぼくをなだめようとしているようだが、その声は今の現状を楽しんでいるようにしか聞こえない。 「湊さん…、どう考えてもこの柄は男のぼくにはきついでしょう…。」 ぼくは、振り袖の柄を再確認しながら抗議した。 「そんな事ないよ~。なっちゃん、とっても似合ってるよ~。ねぇ~りっちゃん♪」 「確かに…、尋常じゃないくらいに合ってるわね。まあ、どちらにしても、浴衣を着ないと七夕祭りには参加できないんだから、諦めなさい。」 ぼくの必死の抗議もむなしく、ぼくは、公衆の場で女性物の浴衣を着て行く事が確定してしまった。 なぜこんなことにななってしまったのか…。
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!