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「ほら…晴火見てごらん?ここから向こうには罪を犯した人間がたくさんいるんだ」
雪のたくさん降る山の中。
廃村の近くにあったその刑務所の壁を、13歳の兄は指差して私に言う。
その時私はまだ7つで…レンガが積み重ねられて出来上がった壁の向こうが、まだ何か理解出来ない歳だった。
刑務所に来るまでの雪の積もった道に付いたのは小さな二人分の私達の足跡だけで、あとはうっすらと雪の積もった車で作られた轍(ワダチ)だけだった。
その車の轍はすぐ隣に見える、錆び付いたペンキの剥がれた鉄の扉の前で消えている。
私はソレをボンヤリ眺めていると兄は隣で白い息を吐きながら言った。
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