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その日は風が強かった。
道脇の塀から覗く木々は皆、茶色に煤けてほとんど落葉している枝を伸ばして揺れ動かす。
冬の寒さも本格的になってきて、歩いて帰宅する晴火にとっては拷問に近い横殴りの風。
寒空にさらされたアスファルトは、実は氷で出来ているのかと思うほど靴を貫いて足の裏を冷やしていた。
「さ……寒ーい!!」
晴火は玄関に飛び込むと、靴を整えずに慌てて制服にマフラーを巻いたまま炬燵に入り込んだ。
「はぁ…ごくらくごくらく…」
「やぁだもう晴火!!制服がシワクチャになるからやめて頂戴!」
洗濯物を片付けていた母親が通りすがりにその姿を発見して眉間にシワを寄せる。
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