刑務所の壁

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私はソッと壁に耳をつけて耳をすませてみる。 ただ壁の向こうから何も音はしなくて、雪がモコモコのジャンパーの肩にフワリフワリとゆっくり積もる。 兄の手をついてうなだれる頭は白い雪が積もっていた。 兄は祈りなのか懺悔なのか…ただ手をついてうなだれているのを、冷たくなって痛くなる耳を壁について見ていた。 しばらくそうしていたが、やがて兄が微笑みながら私の手をとると私の手を引いて歩いていく。 兄の大きな手は冷たくて、足跡のついた雪道を二人並んで歩く。
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