シンクロ・ノイズ・クライング

てるてる坊主

　
「今日はごめんね、わざわざ来てもらっちゃって。まぁくん、どんだけ呼んでも出てこなくてね。……そうなのよ、高校卒業してから１２年、ちっとも。引きこもりだ、ニートだ、ってお父さんも散々怒鳴ったんだけどね、出てこなくて。ほら、高校卒業してからまぁくん就職したんだけどね、あの頃って不景気だったでしょ。だから、まぁくんが就職したところ３ヶ月も経たない内に倒産しちゃって。皆は大学行ったり就職したりしてるのに俺だけ無職なんて格好悪いって。で、こもっちゃったのよ。……今日は何の用事で？　ああ、成人式も同窓会も行かなかったからね、まぁくん。それで、３０歳の新しい同窓会に？　……本当、ありがとうございます。まぁくん、良い友達いたのね。…………。ほら、まぁくん！　友達来てるから返事ぐらいしなさい。……してよ、お願いだからっ！！　…………。本当に、ごめんなさいね。まぁくん、この調子だから、ね。え、部屋から変な臭いがする？　ああ、まぁくん部屋から出てこないから。そぉ、鍵も閉まったままでね。食事も食べないのよ。……ごめんなさいね、何か嫌な思いさせちゃったみたいで。……まぁくんの事嫌わずにまた誘いに来てくれないかしら？　ああ、本当？　ありがとう、貴方達、いい人達ね。今日は本当にありがとう」

　スチャ。カチャ。ガチャガチャ。ギィー。ガッチャン。

「まぁくん、入るわよ。……もう、またてるてる坊主の真似して。友達来てたんだから返事ぐらいしたらどうなの？　あ、また散らかして。友達がまぁくんの部屋臭いって言ってたわよ。ちゃんと片付けなさい。聞いてるの、まぁくん。…………。あぁ、そんな泣かないでよ。お母さんはまぁくんの事、嫌いにならないから。まぁくんを嫌いになったお父さんはいなくなったけど、お母さんは絶対嫌いにならないから。…………。そうね、明日晴れになったらいいわね。明日晴れになったら、外に出ましょうね、まぁくん」