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例えば、北の方向からボールが飛んできたとして。
北を向いてる人には、真正面からボールが飛んできたように思えて。
南を向いてる人には、真後ろからボールが飛んできたように思えて。
東を向いてる人には、左からボールが飛んできたように思えて。
西を向いてる人には、右からボールが飛んできたように思うだろう。
ただそうやって方角を向いて立つ人にも、様々な人がいて。
ボールが飛んできた事について疑問を抱き、ボールが飛んできた方向を探す人がいれば。
ボールが飛んできた事について何の興味も持たず、ただボールが飛んできたのを見ているだけの人もいるし。
ボールが飛んできた事について何の興味も持たず、その後ボールを目で追いかける事もしない人だっているはずだ。
十人十色。
人はそれぞれ意見が違い、確固たる個性を所持しているべきだ。
ボールだと思ってた物が実は爆弾で、その場にいた人間が爆風で粉々になったとしても、最後の一時まで違う考えを抱いているのだろう。
つまり。
僕がこうしてキミへの愛を訴えかけたのだって、キミは恐怖に感じてしまい、その白く美しい手に握られた輝く銀のナイフが、僕の腹部に刺さっていたとしてもおかしくはないわけで。
多少、僕の愛は僕自身の理性を越えてしまい強引になってしまったかもしれないが、この愛は海よりも深く穏やかで空よりも広大で澄みきったものであった事は伝えておきたい。
そして、キミには泣き顔よりも笑顔の方が似合う事を、いつも視ていた僕が断言しておこう。
そう、今だって、何度も僕の事を刺しながら微笑むキミが、赤く染まってとても美しい。
嗚呼、愛してる。
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