家の中の嵐

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  佐々木家では基本的に、帰る前には家にいる家族に電話かメールをするというルールがある。 家訓といってもいい。 だいたいは『いまから帰るよ』といった具合だが、父はそこにハートの絵文字をつけることがある。 ハートのあるときとないときの違いを、わたしは聞いたことがなかった。 時計を見る。 時刻は9時半。 いつもの父と母はだいたい10時ごろに帰ってくるが、今日はどちらも嵐と戦わなければならない。 長期戦になりそうだった。 「ご飯はいらないんだったよね」 二時間ほど前のわたしとのメールを確認した弟は、テレビをつけた。 頷こうと頷かまいと、夕食の用意をする気はないようだった。 わざとらしく肩をすくめて、キッチンに向かう。 大学から帰えれば、紅茶を入れてティータイムと決めているのだ。 ちなみに、母も帰れば真っ先に紅茶を飲む。 わたしの紅茶好きは、きっと母の遺伝だ。  
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