まるい四角

　弟は、わたしを「茉莉ちゃん」と呼ぶ。

欧米化した最近の姉弟は、名前で呼び合うことが多い。らしい。
ただ、わたしたち姉弟は欧米化しているわけでも、友達感覚をよそおっているわけでもない。

　思い出してみると、記憶の中の小さな弟は、いつも、わたしを追いかけ回していた。
お下がりのピンクのパーカーがよく目につく。

わたしは舌の足りない口が、「お姉ちゃん」と発音するのが好きだった。

その響きはどこか尊敬するような雰囲気を持っていて、わたしの小さな胸を誇らしさでいっぱいにした。

いまはもう、わたしの胸には酸素しか入らない。