家の中の嵐

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    「うちの高校一番のお嬢様。箸より重い物は持てませんって顔して、ブランド物の鞄は持てる人」 わたしは『お嬢』なる人物よりも、弟がブランド品の判別ができることに驚いた。 我が弟ながら、まったくお洒落に興味がないのだ。 弟が高校三年生になったいまも、服はわたしか母が買ってくる。 小さい頃にやった着せかえ遊びの延長線のようで、わたしはいつも弟の服選びに弾んでいた。 「電車が遅れてるらしくてさ。母さん、いつもより遅くなるって」 リビングの灯りをつけながら、弟が言った。 「……お父さんは?」 すかさず聞く。 「さぁ? 連絡ないから、まだ仕事なんじゃない」  
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