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嬉しそうに礼を言うユイは、話を続けた。
「なんか、あれ以来。世界樹が『呼んで』いる気がするんだよね。傍に行けば、分かる気がするんだ。」
そう言うユイは少し悲しげな瞳を見せた。
「ホントはカノンノも連れていってあげたいんだけど、あの子に何かあったらパニールやニアタが心配するでしょ。」
…何でいっつもお前は周りの奴らのことばっかり考えてるんだ。
…お前の…。
「お前のことを心配する奴だっていると思う…。」
オレは自分でもびっくりするくらい、自然にそのセリフが出た。
「アッシュ…?」
そして一度そう言ってしまえば、人は何かふっきれるらしい。絶対に普段のオレからはでないセリフがポンポンと出始めた。
「少なくともオレは、カノンノよりお前が心配だ。…お前は何もかも一人で抱え込みすぎる。…少しはオレを頼れ…。あまり役には立てないかも知れんが…。」
何を言ってるんだオレは。ディセンダーであるユイの大変さなど、少しもわからないくせに。
オレを頼れなんて…。
フワッといい匂いがオレを包み込む。
気がつくとユイが、オレに抱きついていた。
「ユ、ユイ…。」
オレは、その…なんだ。マオ風に言うと、
『心臓バクバクーッて感じ☆』
↑こんな感じだ。
「…ありがと。アッシュ。ホントはあたし、いろいろくじけそうだったんだ。」
ユイ…。
何がありがとう、だ。
オレはまだお前に何もしてやっていない。
むしろオレがお前に貰ったモノの方が多いというのに。
「あ、そうそう。アッシュ、これ。」
ユイはオレに、小さな包みを渡してくれた。
「アッシュ、誕生日だよね。…えっと…あたし料理とか下手で…でも、コレットとかエステルに聞いて作ったし、味は大丈夫。だと思う…。」
オレはリボンをほどいて中を見た。
手作りクッキー。
本人すら忘れていた誕生日を、覚えていたというのか。
コイツは。
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