君がいたから◆第1部◆

14/29
前へ
/85ページ
次へ
嬉しそうに礼を言うユイは、話を続けた。 「なんか、あれ以来。世界樹が『呼んで』いる気がするんだよね。傍に行けば、分かる気がするんだ。」 そう言うユイは少し悲しげな瞳を見せた。 「ホントはカノンノも連れていってあげたいんだけど、あの子に何かあったらパニールやニアタが心配するでしょ。」 …何でいっつもお前は周りの奴らのことばっかり考えてるんだ。 …お前の…。 「お前のことを心配する奴だっていると思う…。」 オレは自分でもびっくりするくらい、自然にそのセリフが出た。 「アッシュ…?」 そして一度そう言ってしまえば、人は何かふっきれるらしい。絶対に普段のオレからはでないセリフがポンポンと出始めた。 「少なくともオレは、カノンノよりお前が心配だ。…お前は何もかも一人で抱え込みすぎる。…少しはオレを頼れ…。あまり役には立てないかも知れんが…。」 何を言ってるんだオレは。ディセンダーであるユイの大変さなど、少しもわからないくせに。 オレを頼れなんて…。 フワッといい匂いがオレを包み込む。 気がつくとユイが、オレに抱きついていた。 「ユ、ユイ…。」 オレは、その…なんだ。マオ風に言うと、 『心臓バクバクーッて感じ☆』 ↑こんな感じだ。 「…ありがと。アッシュ。ホントはあたし、いろいろくじけそうだったんだ。」 ユイ…。 何がありがとう、だ。 オレはまだお前に何もしてやっていない。 むしろオレがお前に貰ったモノの方が多いというのに。 「あ、そうそう。アッシュ、これ。」 ユイはオレに、小さな包みを渡してくれた。 「アッシュ、誕生日だよね。…えっと…あたし料理とか下手で…でも、コレットとかエステルに聞いて作ったし、味は大丈夫。だと思う…。」 オレはリボンをほどいて中を見た。 手作りクッキー。 本人すら忘れていた誕生日を、覚えていたというのか。 コイツは。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加