君がいたから◆第1部◆

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「アッシュ、アッシュ!」 オレはふと名前を呼ばれて目が覚めた。 何度目だろうか。 この甲高い声で起こされるのは…。 オレが目を開けると、心配そうに覗きこみ、バカでかい瞳でじっと見てやがる。 赤いオレの髪色によく似た服を着た、茶色い長い髪の少女。「ユイ」。 「こんなところで寝てたら風邪ひくよ!まだ怪我は治りきってないんだよ!?」 オレはゆっくりと体を起こした。 「うるせぇ…。」 オレがそう言って起き上がると、コイツは大抵…。 ホラ、顔を膨らませてこっちを睨んできやがった。 こっちは反応が面白くて、ワザとやってるんだがな。 「せっかくリリスさん達がおいしいケーキ焼いてくれたのに、アッシュのぶんはあたしが食べちゃうよ!」 …お前が食べたいならケーキなんかくれてやる。 そんなふうに思ったんだが、オレはワザと別のことを言う。 「…仕方ない。中に入る。」 そう言ってオレは、ユイを無視するかのように、中へ入って行った。 …オレがこのギルド…。 バンエルティア号にきたのはあれはいつだったか。 怪我をしたオレを助けてくれたのは、 「アッシュさん。お茶が入りましたよ。どうぞ。」 妙におせっかいのナツナッツ族のパニール。コイツを見てると不思議と懐かしい感情が芽生える。 そして、オレが寝込んでいる間、毎日嫌というほど世話をしてくれたのが 「アッシュ、こっちで食べようよ!」 ディセンダー「ユイ」。
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