君がいたから◆第1部◆

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大変な運命を背負ってやがるくせに、コイツは自分の事より、周りの心配ばっかりしてやがる。 最初はウザい…そう思ってたのに、いつの間にか…。 「…恋だな。」 後ろから声がした。 涼しい顔で後ろからオレに囁いてきたのは、 「セルシウス…貴様はオレの心を読むな…。」 そう言ったオレに、セルシウスは含みのある笑いを向けた。 「図星だったのか。…それは予想外だ。」 クスッと笑い、食卓に向かうセルシウスにオレは、若干怒りさえ感じた。 まぁコイツは信用できる。 問題は…。 「あーっ!ルーク!それあたしの分だよーっ!」 ケーキを取られてムクれるユイの後ろから、きょとんとした顔を見せる、オレと同じ顔…同じ声…。 「そーなの?わりっ!」 「あーっ、もう!クリームついてるしー!」 ユイがそう言うと、 「えーっ、どこどこぉ?取って、ユイ!」 ユイはルークの頬についたクリームに手を伸ばして、指で取った。 それを奴はパクっとなめ…やがった…。 「あーっ!食べたぁっ!」 それを聞いていたパニールが二人に言った。 「まぁまぁ。まだたくさんありますから。遠慮なくどうぞ。」 ユイとルークが楽しそうに笑っている様子を見ていたオレは、とある感情が芽生えていた。 …嫌だ。 アイツの笑顔がほかに…特にアイツ。ルークに向けられるのが、オレは凄く嫌だった。 …なんだ。この感情は…。 『恋だな。』 先ほどのセルシウスの言葉が、オレの脳裏に蘇る。 「思い過ごしだ。」 オレはそう、自分に言い聞かせた。
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