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柚奈が休憩室に入るのを確認すると店長は切り出した。
「さて、久志くん。お客様にその態度はよくないわ。しっかり謝ってね」
店長は物凄く怖い顔をして、松本くんを睨んだ。
「………ごくんっ」
あまりの怖い顔に、思わず生唾を飲み込む。
「……失礼な態度をとってしまい、申し訳ございませんでした…!」
松本くんはペコリと頭を下げる。
でも、表情は謝っていない。眉間にシワを寄せている。
「あはは…、いいよ、気にしてないから」
木ノ下さんは、こんな態度な松本くんにも優しく笑った。
内心は怒っていたかも知れないが…。
「…久志くん、貴方も下がっていいわ。休憩室に行ってなさいね」
「…はい」
松本くんは、くるっと体の向きを変えると休憩室に入っていった。
扉が締まるのを確認すると、店長は木ノ下さんの方を見た。
「すいません、まだ入ったばかりで、接客も程々にしか出来てなくて」
「いや…いいんですよ」
店長は、その言葉を聞くと、ここからが本題と、木ノ下さんに顔を近付けた。
「久志くんて、柚奈ちゃんを好きみたいなんですよ。だから、木ノ下さんを見て、ライバル意識を持ってしまったみたいです」
「ああ、やっぱり…」
「分かりやすいですよね、子供って…。でも、付き合うのも時間の問題かな…この調子だと」
「………」
木ノ下さんは、店長の言葉に黙ってしまう。
「でも、木ノ下さん、貴方にも勝算はあるはずですよ」
店長は木ノ下さんの耳元で小さな声で言うと、ニッコリ笑う。
「なっ…何を言うんですかっ」
木ノ下さんは後退りをした。顔が赤くなっている。
カラン カランッ
「いらっしゃいませぇ」
そこに、何も知らないお客さんが登場。
「お客様、こちらにどうぞ。…では、木ノ下様、またのご来店、お待ちしてます♪」
店長はニンマリと笑っていた。
真っ赤な顔の木ノ下さんは、軽く頭を下げると足早に帰っていった。
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