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隣国との戦争が始まって早くも30年が経とうとしていた。
16歳から軍に入った俺も、もう28歳となる。
敵国には、エルネストという槍の使い手がいる。
ヤツは敵国では若くして英雄。
その上、目鼻立ちは見栄えがよく、多くの国民の憧れ。
ヤツに魅力され、敵国へ降った者も少なくない。
同じ男として、少し羨ましかった。
「明日こそは、あのエルネストの首落としてやろうぜ!」
自分の部隊のテントで酒を飲んでいると、同じ隊で、よく連む男が声をかけてきた。
「…そうだな。明日こそは、美味い酒が飲みたいよな。」
そう返すと、「全くだ」と笑って答えられた。
この時、俺は嫌な予感がした。
それを掻き消すために、もう一杯飲んでからゆっくり寝ることにした。
昨日の予感は的中した。
エルネストの活躍によって自軍はほぼ壊滅状態。
主力の軍に至っては、ほとんどが無惨に斬り殺されていた。
多くの仲間がヤツから逃げていく。
昨日話した男の首は、体から斬り離されてエルネストの左手に鷲掴みされている。
それでもヤツを倒したい一心で、俺はしっかり狙いを定めて将軍の首めがけて矢を放った。
矢は狙いが外れ、将軍の乗っていた馬の首を貫く。
それを見届けると、背後から鈍痛が走り意識を手放した。
目を覚ますと知らない場所の白いベッドで寝ていた。
何日も眠っていたかのように体がだるい。動きたくない…。
「よお、目が覚めたか。」
「エ…エルネスト…!?」
とっさに身を引くと、ヤツは面白そうに詰め寄ってきた。
鼻の先と鼻の先が付きそうなくらい顔が近い。
「エルネスト「様」…だろ?可愛い奴隷ちゃん?」
「なっ…何言って…」
「お前ら負けたんだよ。んで、お前は奴隷として売りに出された。それを俺が買った。」
「なんで…?」
「気に入ったモノは何でも手に入れる主義なんでな。」
少し前まで俺の仲間を斬り殺していた男が目の前にいる。
はっきり言って怖い。
ヤツは軽いキスをしてニヤリと笑って言った。
「俺のモノになれ。」
震える体は押し倒され、その夜、思うままに弄ばれた。
どうやら、この男は戦場でもベッドの上でも鬼畜らしい…。
‐おわり‐
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