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俺のお仕事。盗む理由はただ一つ。
汚い金持ちの手中にある金品が俺に助けを求めてるから。
つまり、盗める物はぜーんぶ俺の物!ってワケだ。
でも、たまーに失敗することもある。
これだ。
青いビー玉がはまったオモチャの指輪。
逃げる間際にうっかり聞こえたんだけど、親の形見らしーんだよネ。
俺、そーゆー話ダメなんだわ。
あー…、早く返してやらねーと…。
「こんにちは!私、以前この家にお世話になった者で、本日は改めてお礼に伺わせて頂きました!」
誰だ?コイツ…
あ、俺だ。変装してんだ。
「まあ、そうだったんですか。どうぞ、お上がりになって。」
美しいマダムに通されて大広間に案内される。
このマダムはこの屋敷の主の元愛人だ。
妻を毒殺して今の立場。貴族ってのは、わっかんねーなぁ…。
「お茶を持ってきます。お待ちになってらして。」
「どうも、お構いなく。」
さてと、仕事を始めますかね。
多分、盗まれて困ってんのは末っ子坊ちゃんかな?
あれま。
坊ちゃんったら、熊のぬいぐるみとママゴトですか。
コイツじゃないな。俺の勘も鈍ったもんだ。
次、次男坊。
コイツもダメだな。盗みが入ったことを爆笑しながら電話で友人に話してる。
最後、長男。
コイツも怪しいんだよなぁ…。何せ20歳過ぎたオッサンだしなぁ…。
って、ビンゴですかい。
めっっちゃくちゃ分かりやすく凹んでるし…。
近づきたくないくらい負のオーラが…。
ま、仕事だから行きますか。
「何だよ、お前…」
ポケットから指輪を出すと、坊ちゃんは飛びついてきた。
「どこで!?」
「俺が間違えて盗んじまって…。」
「返ってきてよかった…。でも、犯罪は犯罪だから。」
「おナワ頂戴する覚悟はできてますとも。」
あれ?何か天井を背景に坊ちゃんの顔が見える…
あれ…?頭の後ろに硬い床を感じる…
「いい覚悟だ。」
坊ちゃんはニヤリと笑うと、腕に縄を巻き付けて服を脱がし、ふかふかのベッドの上に俺を放り投げた。
「あ…あのー…これから何を…?」
「二度と盗まないように教育してやるよ。じっくりとな。」
…明日から真面目に働きます。ハイ。
‐おわり‐
→あとがき
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