波紋

2/11
前へ
/126ページ
次へ
結局、涼子はあれから何も言わず帰って行った。 残された俺は途方に暮れるしかなく、眠れない夜を過ごした。 …翌朝、店に着くとオーナーはすでに来ていて仕入れた材料を整理していた。 『お早うございます。』 「おう!琉希、お早う。」 「早速だが、この肉の筋引き頼むよ。」 『はい、分かりました。』 俺はコックコートに着替えてキッチンに入った。 仕事をこなしながらも昨日の事が頭の中から離れない。 いったい、俺はあの女性をどんな眼で見ていたのか? 涼子は何故泣いていたのか?………。 その時 『っ痛!! 』 「どうした?琉希っ!?」 「おっおい、直ぐに手当てしろ!!」 とオーナーが慌ててやってきた。 俺は考えすぎるあまりに、仕事に集中出来ていなかった。 俺の左の手のひらから血が滴り落ちていた。 「結構深く切ってんな、琉希直ぐに病院に行け!」 『すいません、オーナーこの忙しい時に。』 「いいから早く行ってこい。」 俺は何とも情けない気持ちになりながら病院へと急いだ。
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

291人が本棚に入れています
本棚に追加