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結局、涼子はあれから何も言わず帰って行った。
残された俺は途方に暮れるしかなく、眠れない夜を過ごした。
…翌朝、店に着くとオーナーはすでに来ていて仕入れた材料を整理していた。
『お早うございます。』
「おう!琉希、お早う。」
「早速だが、この肉の筋引き頼むよ。」
『はい、分かりました。』
俺はコックコートに着替えてキッチンに入った。
仕事をこなしながらも昨日の事が頭の中から離れない。
いったい、俺はあの女性をどんな眼で見ていたのか?
涼子は何故泣いていたのか?………。
その時
『っ痛!! 』
「どうした?琉希っ!?」
「おっおい、直ぐに手当てしろ!!」
とオーナーが慌ててやってきた。
俺は考えすぎるあまりに、仕事に集中出来ていなかった。
俺の左の手のひらから血が滴り落ちていた。
「結構深く切ってんな、琉希直ぐに病院に行け!」
『すいません、オーナーこの忙しい時に。』
「いいから早く行ってこい。」
俺は何とも情けない気持ちになりながら病院へと急いだ。
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