春の訪れ

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朝、起きて私が居間に出ると瑠美がもう朝食を作っていた。 「もう起きていたのか、瑠美。」 「おはようございます、直哉さん。朝御飯出来てますよ。」 机に目を遣ると朝食が置いてあり湯気が立っていた。 「早く食べないと冷めちゃいますよ。」と、 悪戯っぽく笑って私に席を勧めてくれた。 「食べないのか?」 「私はもう食べましたから。」 「そうか。」 「何か飲みますか?」 「じゃあ、コーヒー。」 「ストレートでいいですよね。」 「ああ。」 瑠美は鼻唄を歌いながらコーヒーを入れに行った。 今日は妙に上機嫌だな。何か良い事でも有ったのだろうか。 私が少し考えていると瑠美がコーヒーを入れて戻ってきた。 「コーヒーが入りましたよ。」 「ありがとう。」 「どうしたのですか直哉さん、真剣な顔をして。」 「いや、何でも無い。」 瑠美は不思議そうな顔をしながらコーヒーを飲み始めた。 私もコーヒーを一口飲むと香りが口の中に広がった。 「いい香りだな。」 「ちょっと豆を変えてみたんです。」 私はこのタイミングで尋ねてみた。 「今日は何故そんなに上機嫌なんだい?」 瑠美は少し驚いたような顔をしていたが、しばらくしてから 「庭の花が咲き始めていたので・・・。」と、少し恥ずかしそうに答えた。 庭を見ると花の蕾が割れ始め、瑠美の大切にしている淡い桃色の蕾が綻び始めていた。 もうすぐ春がやって来る。 心なしか私の口元も綻んでいた。
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