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――このセカイに来てから、初めての朝を迎えた。
起き上がり、俺は敷かれた布団を丁寧にたたみながら気づく。
昨日に比べ、身体の痛みがかなり和らいでいる。
これなら7、いや8割近く力を出せるかもしれない。
少なくとも、今日の決戦において、大きな支障はないだろう。
そう。今日は昨日ディエバさんが宣言した通り、敵の本拠地に攻めこむのだ。
激戦が予想される。彼女の足を引っ張るわけにはいかない。
「おはようございます」
俺が布団を片付け終わった丁度そのタイミングで、この家の主が部屋へやってきた。
朝食を用意してくれたらしい、実にありがたい。
彼女に案内されリビングへ。
丸いテーブルの上には三人分の食事が。
既にディエバさんはそこに座っていて、俺を待っていてくれたようだ。
白米に焼き魚、目玉焼き、キュウリのざく切りにマヨネーズをかけたもの。
バランスのよい朝食。お腹もすいていたし、本当に助かる。
いただきます、と挨拶をして俺とディエバさんはそれを食べ始めた。
「……ん、ぬ」
「?」
食べはじめて数分、何やらディエバさんの表情が曇る。
焼き魚を箸で突っつきながら、渋い顔をしていた。
「何してるんすか?」
「……骨が、うまくとれん」
……随分と間抜けなことをいっているが、どうやら彼女はおおマジの大真面目らしく、ふんっふんっと唸りながらも必死で魚と格闘する。
「不器用なんですね」
「違う」
即答で否定された。
いいながらも、彼女が突っつく魚は見るも無惨にボロボロになっていく。
完全に不器用である。というか不器用でしかない。
「魚の骨は時に命をも奪う。ゆえに慎重にとらねばならんのだ」
言って、彼女の箸が魚の身体をぐしゃっと真っ二つにする。
慎重どころか大胆である。
もう骨とか関係ない。ただ身をかき回しているだけだ。
「魚の骨くらい……、ほら」
俺は箸と左手をちょちょいと使って、サッと魚の骨の大半を取り除いて見せた。
「……」
「ほら、簡単でしょう?」
「魔法は反則だぞ、アーク」
「どんだけ家庭的な魔法すか、それ」
仕方ないので、俺はディエバさんの魚の骨もとってやることにした。
目を丸くする彼女が何気に可愛くて。
少しばかり、俺は癒されてしまったりしていた。
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