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「とまあ、冗談はおいておくとしてだ」
「アオの冗談は聞くほうが疲れるよ……」
失礼な。
「でもな、一族云々はともかく、春が眠りの季節だってのは割と的を射てると思わないか?」
「え? うーん……」
改めて訊いてみると和真は少し考える素振りを見せた。
「……まあ、春眠暁を覚えずって言うくらいだし、たしかに俺もずっと寝てたいって思うときはあるけどさ」
「ああ、俺その慣用句にも異議を申し立てたいと思ってたんだ。薬指突きつけて。異議有り! って」
「色んな意味で捕まりそうだね……って、薬指!? 人差し指じゃなく!? すごい器用だね! それにすごい起用!」
「俺、型にはまった人間にはなりたくないんだ」
「飛び出しすぎも問題なんじゃないかと思うけど……」
「勢いよく飛び出してみせる。その心は?」
「……カタパルト?」
型だけに。
頷いてみせるとなんだか和真がげんなりしていた。なぜだろう。
よくわからなかったので普通に話を続けることにする。しかし相変わらずツッコミが冴えてるな。
「俺に言わせれば、春眠だろうが冬眠だろうがドーパミンだろうが暁なんざ覚えないと思うんだ。睡眠暁を覚えずに変えるべきだとここに宣言する」
「……もう面倒だからドーパミンにはあえてツッコまないけど、とりあえずそれはここじゃなくて文部科学省あたりで宣言してよ」
ため息混じりにツッコミを放棄された。なんか寂しい。全国のボケのみんな、俺を慰めてくれ。
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