ボクっ娘彼女とクリスマス

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ピピピピ、と目覚まし時計が鳴っている音が微[カス]かに聴こえ、目が覚めた。 いくら暖かい布団の中とは言え、12月の寒さは布団に出来た僅かな隙間から侵入してきて、ボクの体は無意識にブルッと震える。 相変わらず『朝ですよー』と言わんばかりにうるさい電子音から逃げるようにさらに体を丸めて布団に潜り込むけど全く効果は無いみたい。 諦めたボクはなるべく隙間を作らないように布団から手を出し、うるさい目覚まし時計をガシッと掴むと―――― 「うおりゃあぁぁぁっ!!」 持てる限りの力を出して壁に叩きつけた。 その後、響くのはバキッと金属やプラスチックが壊れる音。 これでようやくボクの安眠を妨害する邪魔者は居なくなったわけだ。 ははん、ザマミロ。 安心したボクはまた布団の中で丸まり、夢の世界に飛び立つ為に目を閉じた。 でもそれは顔の横で振動してくるケータイによってまた阻[ハバ]まれる。 イライラしながら携帯を掴み―――さすがに投げるわけにはいかないからね―――横のオープンボタンを押してケータイの液晶をぼんやりと見つめる。 そこに表示されているのは【12月25日(木)9:45】の文字と先月晴れて恋人になった彼とのツーショット写真。 2人とも恥ずかしいのが丸分かりで顔は赤いけどその手はしっかりと世間一般で言う恋人繋ぎをしている。 いつだってこれを見ると自然にボクの顔は笑顔に変わってしまうのだ。 ここである事に気づいたボクは布団から飛び起き、そのまま正座の状態に移行する。 そしてケータイの画面を凝視すると勝手に頭の中で連想ゲームを開始し始めた。 12月25日と言えばクリスマス、クリスマスと言えば恋人と過ごす1日………そして現在の時間は9時45分。 そこから導き出された答えにサーッと顔から血の気が引いていくのが分かる。 彼と約束をしたのが先週、待ち合わせは10時ちょうどにこの町のシンボルマークとも言える駅前の大きな木の前に集合。 待ち合わせは10時。今の時間は9時45分。そして家から駅まで徒歩10分。つまりボクが身支度に費[ツイ]やせる時間はたったの5分。 唖然としながらケータイを見ていると、一番後ろの数字が5から6に変わった次の瞬間―――― 「ち、遅刻だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」 叫び声と共にボクの慌ただしい1日が始まったのでした。
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