ボクっ娘彼女とクリスマス

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慌ててクローゼットから予[アラカジ]め用意しておいた服をひったくるように取ると、下着オンリーという全国の男子が喜ぶであろう格好になり光の速度で着替える。 そしてベッドのケータイを掴み、部屋を出て一階に降りるとすぐさま洗面所に直行。 鏡を見てみると案の定髪の毛はボサボサで頭の上にアホ毛が根付いていた。 とりあえず急いで顔を洗って歯を磨きながら考える。この間わずか23秒。 どうやって寝癖を直すか考えた結果……… 「せ~の………ふんっ!!」 気合いで抑え込む事にした。 手をゆっくり離すと鏡に写っているのはお馴染みのショートボブに戻っているボクの髪型。一応後ろも確認してみるけど問題は無さそう。 正直自分でも出来るとは思ってなかったよ、うん。 気合いってスゴいね、と自分の中で納得すると急いでリビングに移動する。 「あら~、きょうちゃんったら一体そんなに慌ててどうしたの~? まるで大事なデートの日を忘れてうっかり寝坊しちゃって大ピンチ………みたいね~♪」 「お母さん、実際そうだと思うよ? ほら、お姉ちゃん顔真っ赤にして変なポーズで固まってるもん」 そう言いながらコーヒー………ではなくココアをずずっと音を発[タ]てながら啜[スス]るボクの妹。 甘さが足りなかったのか砂糖をいっぱい入れる。スプーン一杯じゃなくて『たくさん』って意味の方。糖分摂りすぎでお腹壊しちゃえ! 「そ、そうだよ! 寝坊して時間ギリギリに起きて急いでるの! だから早くパン焼いてーー!!」 「はい、食パン。私が食べてないの一枚あげるから急ぎなよ」 前言撤回、このまま毎日朝に食パン4枚食べる元気な女子高生でいておくれ! ボクはこんな良い妹を持って幸せだよ!! 心の中で妹に感謝しつつ荷物を持って玄関の扉を開く。 口にくわえたパンを一旦取り出してから後ろを振り向き……… 「行ってきまぁぁぁっす!!」 「「行ってらっしゃ~い」」 僕は背中に2人の声を聞きながら押されるように駅を目指して走り出した。 現在の時間【9:48】 「………楽しそうだったね。お姉ちゃん」 「えぇ、本当にねぇ………あの子があんなに元気になるだなんて、三年前は予想もしてなかったわ」 「…………前みたいに戻らないよね? お姉ちゃんとの関係」 そうポツリと発した言葉に彼女はただ優しく、嬉しそうに笑顔を向けるだけだった。
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