ボクっ娘彼女とクリスマス

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家から破竹の勢いで飛び出したボクは某元悪魔超人の如[ゴト]く走り続けた。 走れば走る程身体を突き刺す様な冷気が襲いかかって来るのだけども、今のボクは『遅刻』と『デート』の事だけしか考えていなかった。 気がつくと、いつの間にか目的地である大樹の前に着いていた。 クリスマスシーズン真っ只中だから、葉が散った枝に所狭しとイルミネーションが飾られてある。………朝だから明かりは点[ツ]いてないけど。 携帯電話を取り出して時刻を確認。表示された時間は…………【9時59分】。人間やれば出来るもんなんだね。 「ハァ、ハァ……………っ。あっ、あれ………? 待ち合わせ場所って確かにここの筈………だよね?」 辺りを何度もキョロキョロと見回すけど彼の姿は何処にも見当たらない。周りを捜しても姿形はさっぱりだった。 息が荒くなったボクは息を整えるため、設置されているベンチに座った。 ところが座った途端に、今まで抑えていた、心の中の不安がドロドロと溢れ出てきた。 ―――――ボクが来るのが遅かったからきっと帰っちゃったんだ ―――――もしかしたらボクの事を約束も守れないダメな女だと思っているのかも ―――――そしたらきっとボクの事を嫌いになって新しい彼女を作るんだ ―――――ボクなんかよりもっと可愛くて、優しくて、女の子らしくて、約束もちゃんと守れるような女の子を…… 気がつくと膝の上で握っていた手に水滴がポタリ、またポタリと落ちていく。 その水滴が冷たくて、見ていると悲しくなって、また彼の事を思い出してしまって、またポタリと落ちる。 よく考えると慌てていたせいで手袋を着[ツ]けてくるのを忘れている事に気がついた。 …………あはは、やっぱりボクは馬鹿だ。あの頃と何一つ変わっていない。 ドジで、周りから浮いてて、周りが近づこうとしても自分から離れていく――――あの頃の『私』と何も変わっていない。 彼に興味を持たれるために自分を偽って、呼び方を変えて、明るい性格の『ボク』を造り出した。 でも…………心の奥では薄々気づいていたのかもしれない。 好かれても、彼が好きなのは造り出した『ボク』であって『私』では無いことに。 …………全くバカバカしい。 風邪をひく前に早く帰らないと。 『私』は冷えきった身体をベンチから離す為、腕に力を入れて――――
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