─魅惑×疑惑─

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 もぎゅもぎゅとチキンを嚥下しながらメイドは淡々と告げた。 「いやね、近々この街でお偉いさんが裏取引で欠片を買うらしいのよ。欠片の売買行為は法律でも禁止されてるし、一般人が欠片を所持するのも駄目。  取引もいつだか解んないからこの街に居座りましょーって話ですよご主人様」  何というか、頭を金属バットで殴られたかのような感覚になった。 「お、俺はどうする!? 強制連行じゃなかったのか?」 「ああ、それも後回しですよご主人様」  ……そうか、なら俺は取引の親玉を応援しよう、だが決して頑張れとは言わない。取引を引き伸ばせば引き伸ばすほど俺はここに残れる。どうか取引しませんよう祈る。 「兄さん」 「ってうお!!」  幽霊のように俺の横に立っていたハトは、瞳に涙を溜めながら神速の速さで、 「ヴァカァ!!」 「あいだぁ!!」  俺の顔をグーで一閃した。グーは無いだろグーは。 「凄い痛かったのに、どうして助けてくれなかったの!!」 「ご、ごめんなさい……」  不意打ちの痛さのあまりに何故か謝っていた。シャレになんないよこれ。 「それと、何なんですかあの力は! わけの解らないモノを次から次へと……」 「ハトちゃんハトちゃん、カラスの欠片はねぇ。神の──」 「ミィよ。黙ってくれたらチキンをあと一本くれてやる」 「ごめん忘れた」  やたー、と残りの一本に噛み付くミィ。ハトは忌々しい目で俺を睨みつけた。 「く……卑怯な」 「そう言うこと」  秘密主義ですから。 「ふん……もういいです」  ふい、と顔を俺に背けたと同時に不気味な音が鳴る。 「………う」  腹に手を当てながらハトは小さく唸った。 「こらカラ─じゃないご主人様、妹がお腹を空かせてるんですよ! 兄として、人として、その肉をよこしなさい!」 「駄目に決まってるだろう。これは俺のだ。第一、自分達の部屋でルームサービス取ればいい話しだ」  う……それは、と難しい顔をしてミィは黙りこんだ。それをハトが援護する。 「それは出来ないわ兄さん。私達が機関から援助されたお金はそう多くないもの。ルームサービス何て贅沢な物食べたら、私達一文無しになっちゃうわ。それに、」  ぐぅ、と可愛い音。ハトは顔を染めながらも言った。 「私とミィさんは、朝から何も食べてないの」 「何でまた」 「そ、それはその、ミィさんが……」  ハトは視線をミィに向ける。ミィはおよよとドラマみたいに泣き崩れた。
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