─xxx中毒xxx─

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 北に位置する名もない町。  気候は常に十五度以下を守り続け、人口は三桁あるかないか。車を一時間走らせれば街がある。そんな田舎だ。 「あなた、起きてるの?」  ノックの音で目を開ける。いや、実際は一時間前に眠気は覚めていた。できるなら、一生起きたくない。 「ああ、起きてるよ……」  返事は返ってこない。階段を降りていく音が聞こえた。 「……また今日が来たか」  憂鬱だ。  今日も私は、失敗を実行するために生きている。  階段を降りて向かう先は洗面所。手早く顔を洗い、鏡を見て逆らえない遺伝に悩む髪を整える。  大丈夫、私はまだ三十前半だ。髪とおさらばはまだ早い。  こみ上げる欠伸をかみ殺してスーツに着替える。リビングへ向かうと人気はない。テーブルの上には寂しく置かれた食事達。 「────」  いつからだろう、妻のご飯が素っ気なくなったのは。おそらく、ずっと前からだ。妻は私との食事から逃げるように、子供を連れて朝早くに家を出る。 「はぁ……」  もうこんな生活にも慣れた。静かな家の中に、耳障りな食器とスプーンが響く音にも。 ◇  八時三十分。  一時間で着く白の街まで私は車を走らせた。車を有料の駐車場に止めて、職場に向かう。 「………」  つもりだったのだが。気が変わった。今日は会社を休んであの洋館に向かうとしよう。  会社のパソコンでサイト巡りをしているときに見つけた。何でも、不思議な欠片を売っているらしい。  場所は都合よくこの街の外れにある洋館だった。私は数回そのサイトの管理人とパソコン上で文字による言葉を交わし、ついに今日会うことになった。  そして歩くこと十五分。街の外れの林を抜け、ホラー映画でしか見たことがない洋館にノックもせずに入る。  ロビーには長身の男がいた。服越しでもわかるぐらいの筋肉を鎧のように纏っている。 「……アイツの客か。こっちだ」  血走った目で私を睨みつけたあと、危険じゃないと判断したのか、背中を向けて廊下の奥へと歩いて行った。  何個目かの扉を通り過ぎたあと、男はピタリと足を止めた。横にある扉を叩く。 「開けるぞ」  中にいる奴の返事も聞かずに扉を開ける。部屋の中は会社の社長室でしか見たことがない広いデスクがあり、無駄に大きな椅子には一人の男が座っていた。
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