白い涙

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後輩と入れ替わりで、俺は外に出た。 俺はよく人からバスケの才能があると言われるが、生まれつきなんかじゃない。 ただバスケが好きで、上手くなりたくて、がむしゃらに練習してきただけだった。 毎日1時間以上は外でマラソンしてたし、シュート練習だって基礎を何回も何回もやった。 パス練習は友達や先生に付き添ってもらってやった。 どれも自分が勝手に身に付いたものじゃない。 汗を流した分だけ、俺はバスケの頂きに近づくのだ。 俺は汗をタオルで拭いた後、水を飲んですぐに練習を再開した。 「じゃあここを読んでもらいましょう」 今日の一番最後の授業は現代国語だった。 朝の疲れが出て、アクビが止まらない。 それを先生に見られていたらしく、化粧の濃い30代最後のおばはんに当てられました。 「じゃあ眠そーな阿部啓介君。最初からどうぞ読んでください」 俺はクスクスと皆に笑われ、教科書を読む。 「人間失格、太宰治。私は、その男の写真を三葉、見たことがある。―――」 作品の半分くらい読み終えると、やっと先生が止めた。 「ありがとう。さすが阿部君」
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