白い涙

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若くないくせに若く見せようとしているところが健気だな…。 何故、先生に、さすが阿部君、と言われたかというと、俺は国語が得意だからだ(読書が好きだし)。 「じゃあこの続きを……鈴木真美さん。はい、どうぞ」 俺はピクッと反応して、彼女の声に聞き入る。 「自分の田舎の家では、十人くらいの家族全部、めいめいのお膳を二列に向かい合わせに並べて、―――」 彼女が教科書にのっていた、人間失格を読み終えても俺は、まだボンヤリとしていた。 「太宰治は昭和13年に―」 先生が太宰について話し始めたと同時に、隣の席の晋哉が俺の肩をトントンと叩いた。 「何だよ?」 俺は小声で聞く。 いつの間にか話しは、先生の恋愛談になっており、皆は授業よりも興味津々に聞いていた。 俺はあんなおばはんの恋愛談なんて聞く気さらさらないけど。 「シャー芯くんね?」 この状況でシャー芯を要求してくるのか? 「一本でコーヒー牛乳おごりな」 「じゃあいらねぇわ」 「冗談だっつうの」 俺たちはひそひそと話して、先生の恋愛談が終わるのを待った。 「でね、私、その彼氏とは7年付き合ってたんだけど、ある日ね、マレーシアに行くって言われてぇ…」
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