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付き合いだしてから双葉は武のアパートに住み移った。
同棲を始めたのだ。
今、双葉はあのコンビニでバイトをしている。
同棲を始めた頃、彼女はあのコンビニのバイト募集の貼り紙をみつけたのだ。
彼女は本当に、まったくといっていいほど料理をしていなかったらしい。
武のご用達のコンビニに、双葉もまた通っていたのだ。
けど、付き合いだしたことを切っ掛けに双葉は料理を頑張りだした。
別に料理をしなくても全然構わないと思っていた。女性は料理をするべき…という考えは持っていなかったからだ。
けど懸命な姿はけっこう嬉しいし、可愛らしいのだ。
今晩、彼女はコンビニのシフトが入っていないため。夕食の料理を作ってくれている。
『タケもう出来るからテーブルの上片付けてよ』
キッチンから双葉が言う。
『これ全部フタバのだろ』
料理本が2、3冊テーブルの上にあがっている。
毎日のように本に見入っているのだ。
1冊もあればいいんじゃないのか?
と疑問に思いながら片付け始めた。
テーブルの上に皿に盛られたシチューが二人分並べられた。白い湯気が立ち上る。いい匂いだ。じゃがいも、ニンジン、ブロッコリー…がゴロゴロ入っている。
不恰好に切られた野菜が目についた。大きさが疎らである。野菜の形はいまいちだが、そんなことは関係ない。
普通にうまければそれでイイ。飛び上がるほど美味くなくてもいい。
俺のためだけに作ってくれたことで充分だ。
武は付き合いだして、一層双葉に惚れ込んでいった。
武は双葉に幹を知っているか聞いてみた。
双葉も幹とは高校が同じだから、何かを知っていると思った。
双葉や実利が3学年のとき彼は1学年だ。
しかも好意を寄せられていたとなれば、何かを知っているんじゃないかと思ったからだ。
彼はたまに店に来るのだが、やはり武の顔を盗み見るので、何だか気味が悪かった。
だが双葉は知らないと答えた。
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