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ただ1つ武には気になることがあった。
双葉の嫉妬である。
仕事中に実利と話すことにも嫉妬するぐらいだ。
女性というのは皆そうなんだろうか?
俺も多少するかもしれないが。
双葉の場合は違うのだ。
(…話さないでほしい)
とまでいう。
浮気なんて、まったくもってしてないわけで。そこまで言う意味がわからない。
だが、武は実利と顔を合わせればそれなりに言葉は交わしていた。
(話さない)なんて無理なのだ。
双葉に言われたとを実利に言うつもりもない。
そんなことを言えばフタリの関係がギクシャクしてしまう。
夕食をとっている最中だった。何の前触れもなく
『今日ミノリと話した?』
テーブルを挟んで向い側に座っている双葉が聞いてきた。
その表情に笑みはなく、じっーと武の顔をみている。
武は視線を双葉からビールに移し、それを口に運びながら答えた。
『いや、今日は互いに忙しかったしなぁ』
嘘だ。
だが、そう答えるのが無難だ。突然ムシするかのように話さない。そんなの無理だ。
視線を彼女に移すと、その顔には笑みが戻っていた。
前に一度呆れたように、そんな無理なこといわないでくれよ…と言ったことはある。
そしたら、その日は口を聞いてくれなかった。
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