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『どうかした?なんか元気ないみたい…』
『ああ…いや。そんなことないよ』
今日はふたりそろっての休日。外食をすることになり、近くの喫茶店で軽く食事していた。
そこは喫茶店のわりにはメニューが豊富で、ふたりがたまに訪れる所なのだ。
双葉がお手洗いに席を離れたとき、それに隠れていた柱が武の前に現われた。
そして、柱にかかった時計に目がいく。
ちょうど時計の針が2時を指そうとしていた。
正午あたりに双葉が武を外食に誘ったのだ…
双葉は支度に時間がかかる。それで、こんな時間になってしまった。
少しして席に戻った双葉は、武の顔をしばらく心配そうにみていた。
そして、また会話が続く。
『考え事?
何か変だよ。口数も少ないし…』
『…あぁ、ちょっと疲れてて』
『そうならそうと言ってくれれば…誘わなかったのに。家で済ませたよ?』
『でも、せっかく休日が合ったわけだしさ。
俺も双葉と外食したかったんだよ』
ふたりの会話を遮るように武のケータイが鳴った。
相手は妹の桜(サクラ)からだった。
『ちょっとゴメン』
武は双葉にそう言うと電話の呼び出しに応えた。
『どうした?』
《今電話大丈夫?》『ああ、なんだよ?』
《ようて程じゃないんだけど。たまにはご飯にでも連れてってよ…?》
ケータイから桜の声が微妙に漏れているため、双葉にはその内容が大体分かっていた。
双葉は目の前に武なんて居ないかのように、黙々と目の前にあるパスタを口に運んだ。
武を心配している間は減りが少なかったが、もう完食しようとしていた。
ケータイを片手に桜と話ている武は、その双葉の機嫌が損ね始めていることに気付いた。
『無神経…』
ケータイを切ってすぐに、双葉が口を開いた。
『おれ?』
『彼女とデート中に電話って…』
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