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幹という男に商品を渡すとき武は、ギョッとした。
一瞬目が合った。ではなく、その青年はさっきから武を見ていた。
何秒前…何分前?からみていた視線だった。
確実に武をみていた。
観察するような目で。
……なんだよ。危ない奴か?
男は普通に店をでていった。
商品の受け渡しで気づいたが、右手には包帯が巻かれていた。
カップルはいつの間にか店内にはいなかった。
仕事を終えてデパートをでた。電車で15分、駅から徒歩10分で自宅へ到着する。
電車に揺られているとき、武のケータイが鳴った。
実利からである。
〈幹くん高校時代ね、双葉のこと好きだったのよ。
相談されたしね。
力になれなかったけど…
だって、すでに彼がいたわけだしさ。
私の勘では…幹くん今もまだ双葉のこと好きだと思う。
もたもたしてると取られるぞ!?〉
パタン…
ケータイを閉じた。
………。
今日も行ってみるか。
デパートをでる前にデパ地下へ寄り、少しのお惣菜を買った。だから、別に夜食がどうこうではないが…
通っているコンビニは3つある。一ヶ所に毎回行くのにはちょっと勇気がいるからだ。
もしかしたら、という期待がどこかにあった。
何も買う予定はないがそこに向かった。
『また会ったね』
彼女の横に立ち、武は言った。
ちょうど、お弁当のコーナーを覗いているところだった。こっちには全然気付いていなかった。
…本当にいた。
勝手に顔がほころぶ。
街灯は適度な間隔をあけて付いていて、夜道は真っ暗ではない。
それにこの辺りは、同じようなアパートが非常に多く立ち並んでいる。
迷路のようだ。
彼女は、別に料理をしないからコンビニを利用しているわけではない。
と、ちょっと熱のこもった口調で言ってきた。
いや、してないでしょ?
と思ったが口にはださない。そんな失礼なことは言ってはいけない。
彼女が例え料理をしない女性でも全然いい。
許せる。
『彼氏いないの?』
料理するしないの話をさえぎり、頭中でモヤモヤしていたことがスバッと口からでていた。
急に話を断たれて彼女の顔がキョトンとなった。
『いないけど?』
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