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ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ……
目覚ましがけたたましく鳴り響いている。
「ん~、皆しゃま、安全にゃしょらの旅をお楽ひみふだひゃい……」
目覚ましの音がまるで耳に届いていない。
起きなければならないはずの少年――エルトは、まだ夢の中。
それから時が経つこと約20分。
ようやくエルトは繰り返し鳴り響く目覚ましに気付き、アラームを消した。
「ふわぁ……」
眠たい眼を擦りながら、目覚ましの時計を眺める。
「8時50分、か……」
欠伸をしながら、目覚ましを投げ捨てる。
しかし、そこでようやく大変なことに気がついた。
「あと10分しかないじゃん!」
エルトが通うフライヤー養成専門学校の登校時刻は午前9時まで。
それを超えると門が閉じられ、次は午前の授業が終わるまで開かない。
つまり、エルトが午前の授業を受けるためには、後10分以内に校門をくぐらなければならない。
「俺の足ならまだ間に合うはず、行くぜ!」
エルトは猛スピードで着替えを終え、家を後にした。
☆★☆★☆
「セ、セーフ……」
なんとか校門まで辿り着き、息絶え絶えに漏らした声に、門番は苦笑しながらエルトに声を掛けた。
「毎日飽きないねぇ~」
「あはは……」
エルトは苦笑で返すしか無かった。
走ってきた疲労が身体を襲い、ふらふらした足取りで教室に入ると、もう既に1時限目が始まっていた。
「またギリギリに入ってきたのか。まったく懲りない奴だな」
そう言い放ったのは、エルトのクラスの担任教師であるルナ=ファシックだった。
エルトは疲れきった笑顔をルナに見せてた後、自分の席に着いた。
☆★☆★☆
「やっと終わった~……」
1時限目の授業終了のチャイムと同時に、エルトは伸びをした。
「まだ1時間目が終わっただけじゃない。もっとシャキッとしなさいよ」
エルトの隣の席でそう突っ込んできたのは、エルトの幼なじみで、隣りの家に住む少女――アリーナ=ラグナス。
「はいはい、分かったから黙っててくれ……」
エルトはアリーナの顔を見ずに、机の上に突っ伏した。
「ふ~ん、そう。じゃあ当然次の飛空艇基礎学の授業でアンタが当たることは分かってるわよね?」
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