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夕暮れ間近な筈だが暖かな陽気、ポカポカと身体を温めてゆき、吹き抜けてゆく緩やかな風。
( 何でやろうか…… )
先程から考えている疑問に、何度問い掛けた処で答えが出る筈もない。
ただ風に吹かれてゆらゆらと、短い筈の髪が靡(ナビ)いてゆく。
そんな彼女に、失礼な言葉が頭上から降って来た。
「 男か? 」
と、しかしこの言葉、実はよく聞くのだ。
女友達と二人で出掛ければ彼氏と間違われ、一人で居れば女に声を掛けられる始末。
つまりは男に見えるらしい。それは本人、意外と自覚している。
そんな女相手の対処も馴れたもの。
だが今回の相手は、男ときた。
「 どちらに見える? 」
男に見えるならば、自分は女装趣味がある変わった人になるだろう。
その相手に、ちょっとした興味本意で問い掛けてみたのだ。
「 ……陰間か? 」
その声に、無反応。
何て事ない。ただ彼女は、言葉の意味が解らなかっただけ
意味が解らない、と言っても、やはり喋る時の雰囲気で少なからず判断出来るものだ。
突然、無言のまま起き上がった彼女
片膝立て座り込むと、眺めたのは先程まで目にしていた景色。
「 残念…… 女、だよ。」
僅かに振り向き皮肉た笑みを浮かべた顔は中性的で、極自然に流し目。その声は女にしては低めな、されど安堵さすかの様な声色。
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